海の豆知識Vol.82  

イラスト:百人一首に遊ぶネズミザメ

魚名の由来-その11-

---子(鼠)にちなむ魚たち---
 海とその生物にまつわる名前の由来についてお話ししましょう。
今回は、今年の干支である子(鼠)にちなんだ魚をご紹介します。

ネズミザメ
 ネズミザメ(学名:Lamna ditropis)は、ネズミザメ目ネズミザメ科に属する魚類で、モウカザメ、カドザメ等の呼び名もあります。
 体色もさることながら、目が丸く、口や頭を含む顔全般の形がネズミに似ていることからこの呼び名になったといわれています。
 サケ・マス類を捕食することから英名ではSalmon sharkと呼ばれていますが、他にもニシン、ホッケ、マイワシ、タラ類、スルメイカ等も餌にする最高次の捕食者です。
 北太平洋の亜寒帯海域に生息し、オホーツク海、ベーリング海、アラスカ湾等の寒冷環境を好むとされていますが、日本の沿岸域やカリフォルニア州沿岸等でも生息が報告されています。
 特徴として内温性魚類であることが挙げられ、カツオやマグロ、カジキ等の回遊魚と共通しますが、生息海域は異なっています。
 マグロ延縄(ハエナワ)漁で混獲され、大半がこの魚の国内流通の一大拠点である宮城県気仙沼に水揚げされて、主に東北地方や関東地方、また各地の山間部で流通しています。例えば北関東地方・栃木県では、「モロ(サメの肉)」の煮付けやフライなどが定番料理として親しまれています。

海鼠
イラスト:海鼠と仲良し白ネズミ 次は「海鼠」と書いて、「ナマコ」と読む棘皮(キョクヒ)動物門ナマコ鋼Holothuroideaに属する海産動物です。夜になると海底を動き回るネズミに似た生き物であるのがこの表記の由来といわれています。
 ナマコは、英名ではSea cucumber(キュウリ)、Sea slug(ナメクジ)或いはTrepang(ナマコ)等、色々な呼び名があり、漢字表記の意味とはまったく異なります。
 また、すべて海産で淡水・汽水域には生息せず、大部分が底生ですが、潜行したり深海で浮遊する種もあります。
 種としては1000種以上が存在していますが、日本国内で一般的に食用に供せられるのはマナマコ(アカナマコ、アオナマコ、クロナマコ)、キンコなどがあります。体はキュウリ状で、前端に触手に囲まれた口、後端に肛門、運動器官として5列の管足があり、背方ではイボ状に変形することもあります。触手で砂泥を口に運びこみ、その中の微生物を食します。腸のまわりに鰓があり、直腸に海水を出入りさせて呼吸を行います。
 ナマコは、気温が下がってくる秋から冬にかけてよく餌を食べるようになるため、冬のナマコが最も味がよく「冬至ナマコ」といわれています。一般的な料理法としては、生きているナマコを塩でよくもんで、硬くなったところで水洗いして塩を落とし、ぶつ切りにして酢漬けにします。コリコリした食感から酒の肴として珍重されています。
 その他、ナマコの内臓を塩漬けにしたものを「海鼠腸(コノワタ)」といい、ウニ、カラスミと並び日本3大珍味の一つに数えられます。また、卵巣を乾燥したものを「海鼠子(クチコ)」といい、一般に三角形に平たく干したものが能登の高級珍味として親しまれています。厳冬の1月から3月に産卵期を迎えて発達肥大化した卵巣を持つようになり、それが口先にあることからクチコと呼ばれているそうです。

四季のさかな話題辞典」金田禎之著より一部抜粋

フェオダリア ~CO2を深海へ運ぶ陰の立役者

 ケイ酸質(ガラス質)の骨格を持つ単細胞の動物プランクトンは放散虫の他にも存在します。それはフェオダリア(Phaeodaria)と呼ばれる原生動物です。大きさは種類によって様々ですが、単細胞生物としてはサイズが大きく、1mmを超えるものが多く存在します(図)。放散虫と同じく、世界中の海の表層から深海まで広く生息します。放散虫と異なる点は、骨格が化石として海底堆積物中に保存されにくいという点です。フェオダリアの骨格は、素材は放散虫と同じでも内部が多孔質でスカスカなため、海底に堆積しても溶解してしまい、化石記録は数えるほどしかありません。また、プランクトンネットで採集する際も骨格が破壊されやすいため、海洋生物学でもあまり注目されない存在でした。しかし、近年の水中カメラの解像度と画像解析技術の向上により、採集の難しいプランクトンを識別し、個体数およびサイズの分布情報を得られるようになったため、このフェオダリアが、実は世界各地の海洋中層で大きなバイオマスを占めることが示唆されています。筆者がマリンスノーの>1mmサイズの分画に含まれるフェオダリア由来の有機炭素量を調べたところ、西部北太平洋では、その大部分を占めることが分かりました。大気から海洋表層に吸収されたCO2は、植物プランクトンの光合成によって有機物として固定され、その後、食物連鎖に組み込まれてマリンスノーとして深海に輸送されます。マリンスノーの重要な構成者であるフェオダリアはCO2を深海へ運ぶ陰の立役者と言えます。

(中央研究所 海洋環境グループ 池上 隆仁)


北太平洋で見られるフェオダリアの一例


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