発電所と環境・海洋生物
 洋上風力発電所や臨海火力、原子力発電所の建設、運用による海域環境や海産生物への影響について、現場調査、野外実験、室内実験を通じて解明するとともに、環境影響評価(環境アセスメント)や漁業影響調査に資するデータを収集、提供しています。

■洋上風力発電所の環境影響評価、漁業影響に関する取り組み
 再生可能エネルギーの導入拡大のため、洋上風力発電への期待が高まっていますが、洋上風力発電所の建設、運用による海産生物や漁業への影響については未解明なところが多く残されています。海生研では、洋上風力発電所による海域環境影響や漁業影響に関する国内外の最新情報を継続的に収集し、国や地域への情報提供や調査手法に関する提言を行っています。
 また、洋上風力発電所の建設工事や風車の稼働に伴って発生する水中音、振動等の影響に関する研究にも取り組んでおり、室内実験によって風車稼働時に想定される音圧レベルの水中音は、マダイ稚魚の成育やシロギスの卵発生に影響を及ぼさないことを確認しています。このような知見を提供することにより、洋上風力発電に係る環境影響評価や漁業影響調査の実施を支援しています。

 

■発電所温排水の影響解明のための調査、実験
 火力、原子力発電所から放出される温排水による海産生物への影響を明らかにするため、室内実験によって様々な生物の温度耐性や昇温と他の要因(低塩分、低酸素など)の複合影響、昇温による行動や種間関係の変化などを調べ、解析しています。得られた海産生物の温度耐性のデータは、「影響評価ツール、温度影響データベース」として海生研のウェブサイトで公開しています。
https://www.kaiseiken.or.jp/thermaleffects/thermal.html 参照)


洋上風力発電による漁業影響の発生要因と
想定される漁業影響の関係


海域における水中音の計測

 また、野外実験や現場調査によって、発電所周辺海域に生息する海産生物への温排水の影響を調べています。発信機を用いたバイオテレメトリーや大型生簀を用いた実験によって、温排水に対するサケやブリなどの魚類の反応行動が把握されました。また、海藻類(ワカメ、アラメ、ホンダワラ類)の幼体を付着させた試験片を用いた調査により、温排水による海水温の昇温幅と海藻類の成長、成熟への影響度合いの関係が明らかになりました。
 

   
アイゴとアラメの種間関係試験   温排水拡散域に設置した生け簀   試験片の比較写真