海洋環境における放射能調査
■福島県の近傍、沖合海域等における放射能調査
 2011(平成23)年3月11日に発生した東電福島第一原子力発電所の事故に伴い、3月23日より東電福島第一原子力発電所周辺海域(30km圏外)について緊急的にモニタリングを開始しました。また、2011年4月22日に原子力災害対策本部により定められた「環境モニタリング強化計画」を受け、5月より福島県のみならず、宮城県沖合から茨城県沖合までの広域的な海域モニタリングを、さらに2013年11月より東電福島第一原子力発電所近傍、沿岸海域(10km圏内)のモニタリングを開始しました。これらのモニタリング結果は、速報値として原子力規制委員会のウェブサイトにて公表されています。

● 海水
 東電福島第一原子力発電所周辺海域(30km圏外)で採取した海水に含まれるセシウム-137の放射能濃度は、事故直後の2011年3月下旬より上昇が始まり、4月15日に最大となりましたが、4月中旬以降は減少に転じています。2011年9月中旬以降は、変化が緩やかになりましたが、全体的に減少傾向を示しています。
 2019年11月上旬には、一部測点の表層水で、減少傾向から外れたやや高い放射能濃度が確認されましたが、2020年1月以降には再び減少傾向を示しており、陸域での降雨後の出水による一時的な上昇であったと考えられます。
 その後も徐々に減少を続けており、事故以前の過去5年間の放射能濃度の範囲に収まりつつあります。しかしながら、近傍、沿岸海域(10km圏内)では、30km圏外に比べて一桁程度高い値となっています。


東電福島第一原子力発電所周辺海域で採取した海水に含まれる
セシウム-137の放射能濃度の経年変化
図中の帯の範囲は、別途実施している調査結果から、宮城、福島第一、福島第二および茨城海域において、東電福島第一原子力発電所事故以前の過去5年間(2006~2010年度)に測定された海水(表層水)試料に含まれるセシウム-137の放射能濃度の範囲(1.1~2.4ミリベクレル/リットル)を示しています。
 
● 海底土
 海底土の表層(0~3cm)に含まれるセシウム-137の放射能濃度は、海水のように時間とともに速やかに減少するといった変化を示しておらず、事故後観測点間にばらつきはあるものの2011年秋には最大値を示し、その後は緩やかに減少傾向に転じています。一方、水平的な放射能濃度分布は、必ずしも発電所からの距離により決まるものではなく、事故直後の海水の移動経路、海底土の性状などが関連している可能性があります。海底土に含まれるセシウム-137の放射能濃度の減少は、主に海底土の再懸濁と水平移動によるものと考えられますが、底生生物の海底土表層撹乱による下方移動や海底土からの溶出、脱着もその要因となっている可能性があります。
 

東電福島第一原子力発電所周辺海域で採取した海底土に含まれるセシウム-137の放射能濃度の経年変化