タイトル:3.発電所と環境・海生生物(4)

3-4 海藻類の生育への影響

■ 放水口近傍の海藻植生変化

 海藻類の多くは海底や海中の基盤に付着して成長するため、環境変化の影響を受けやすい生物の一つと考えられます。温排水や流れの変化などが海藻類の生育や分布などに及ぼす影響について調査研究を行っています。
 ホンダワラ類を中心とする大型褐藻類群落について発電所運転開始前後に調査しましたが、群落の主な生育水深である2~3m以深では温排水放出によるものと判断できる変化は認められませんでした。
 一方、常時4~5℃程度の昇温がみられる放水口近傍では、海藻の種類数が減って小型のシオグサ類やモサズキ類が繁茂し、これらの特定種の交代が比較的頻繁に行われていました。この傾向は海水温の高い夏季に顕著でした。



写真:アクアラングを装着した研究員たちが海藻の潜水観察をしています
海藻の潜水観察


■ 温排水影響の海域実験

 発電所のごく近傍域での海藻類への影響の範囲、程度等を明らかにするために、温排水の昇温程度の異なる場所に、採苗した海藻(ワカメ・アラメ・ホンダワラ類)の幼体を付着させた試験板を設置して、海藻類の成長や成熟等について観察を行っております。
 温排水が直接あたる場所(周辺海域より約3~5℃昇温)、温排水が少しあたる場所(周辺海域より約2~3℃昇温)、温排水が全くあたらない場所の海水温の上昇の程度によるワカメ・アラメ・ホンダワラ類の成長と成熟への影響度合いが明らかになってきました。

写真:ワカメが付いている付着板とに付いていない付着板を並べて見せています
付着板の比較写真

■ 海藻類の生育適水温

 主要藻場構成種の幼体についての室内培養試験を行い、成長が阻害される水温を把握するとともに、最も成長の良い水温を検討しました。
 アラメ、カジメは15~20℃、ホンダワラ類の多くは25℃付近に成長の適温範囲があることなどの基礎データが得られています。



表と写真:10℃、15℃、20℃、25℃それぞれにおけるアラメ・カジメの成長の大きさが写真で示されています
アラメ・カジメの成長と温度との関係

■ 温排水と他の要因の複合影響

 魚介類の場合と同様に、温排水の昇温と低塩分や濁りなどの条件が複合して作用した場合の影響試験を行っています。
 右の図は内湾域で大量発生することがある不捻性アオサを、異なる水温と塩分下で培養して成長を比較したもので、水色から濃い紫色になるほど成長率が高くなることを示しています。20~30℃、塩分24~40で成長が良く、環境の変化に対して高い適応力を持つことが推定されました。



立体グラフ:X軸に日間成長率(%)、Y軸に塩分、Z軸に水温(℃)が設定されています
不捻性アオサの成長と温度・塩分の関係

■ 水流と海藻類の成長

 水温に水流、栄養塩の条件を加え現場に近い環境状態を反映できる試験装置を製作し、海藻類に関する試験を行いました。ナラワスサビノリの栽培試験の結果から、水温は藻体の生理代謝速度に関係し、水流は藻体をとりまく栄養条件に関係すると考えられ、それぞれの好適範囲が推定されました。そして、水温上昇に伴う成長率の低下が、水流の付加によって軽減される可能性が示唆されました。



写真:屋外の回流水槽で観察する研究員と水槽に浮かぶヤツマタモク
回流水槽とヤツマタモク