ご挨拶

理事長 保科正樹 保科正樹理事長

 2020年10月、2050年の温室効果ガス排出量の実質ゼロが表明されたことを受け、電源の脱炭素化、再生可能エネルギーの更なる拡大が検討されています。特に、洋上風力発電に関しては、2040年に最大4500万kWという目標が示されるなど期待は大きいものの、コスト面に加え、漁業を含む利害関係者との協調や海域環境保全への対応など課題も少なくありません。一方、原子力発電については、重要な低炭素電源と位置付けられているものの、安全性に対する懸念もあり、活用に関しては不透明な状況が続いています。

 東電福島第一原子力発電所事故による海域への影響については、海域環境、海産生物とも、放射性物質のレベルは一部を除き事故前の水準に低減していますが、水産物の輸入規制を続ける国が残っている他、風評の影響もあって、福島県沿岸の漁業は未だ本格操業に復帰できておりません。水産物の安全性や海域環境の健全性に対する理解を醸成していくためには、継続的な知見の収集と情報発信が必要です。一方、水産分野では、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化の両立に向けて、2020年12月に改正漁業法が施行されるとともに、資源調査・評価の拡充をはじめとする諸施策が推進されています。

 海生研では、「エネルギー生産と海域環境の調和」、「安心かつ安定的な食料生産への貢献」に寄与できるよう調査研究を進めています。原子力発電の安定運用ならびに東電福島第一原子力発電所事故の収束に貢献するため、海域の環境、生物に係る放射性核種のモニタリングを継続的に実施するとともに、対象核種の多様化等モニタリング技術の高度化に取り組みます。洋上風力発電に関しては、漁業との協調や海域環境の保全と両立した円滑な拡大に寄与できるよう調査研究を行います。また、二酸化炭素の海底下地層貯留や新たなエネルギー資源開発に係る海域環境への影響を評価、解明する手法の他、水産資源調査、種苗生産技術等の開発にも取り組んで参ります。

 海生研は、エネルギー産業をめぐる社会情勢の変化に的確に対応して、将来にわたり海洋生物に係る環境問題の解決に際して、社会の要求に応える研究機関であり続けることを目標に、引き続き努力する所存ですので、皆様方のご支援、ご指導をお願い申し上げます。