海の豆知識Vol.86  

イラスト:牛が書き初めでアマビエを描く。それを見て喜ぶウミウシ。

魚名の由来-その12-

---丑(牛)にちなむ魚たち---
 海とその生物にまつわる名前の由来についてお話ししましょう。今回は、今年の干支である丑(牛)にちなんだ海生生物をご紹介します。

海牛
 読み方は2通りあり、「カイギュウ」と読むと哺乳類の海牛目に属する動物の総称になります。現存するのはジュゴン科1種とマナティ科3種です。いずれも浅い海や河川に生息し、比較的緩慢に動きます。
 また、「ウミウシ」と読むと軟体動物の腹足網に属し、巻貝の仲間ですが、貝殻が退化縮小、または消失したことで、ナメクジ状の形態になりました。名前の由来には諸説ありますが、頭部の触角が牛の角に似ていることからこう呼ばれるようになったとも言われています。水深を問わず、岩場、砂地、泥地、サンゴ礁、干潟など多様な環境に棲んでいます。イソギンチャクやサンゴを食べる肉食性からアオサなどの海藻を食べる草食性の種まで様々です。体の色がカラフルで、大きさや形も様々で、日本では1,400種以上が確認されており、名前の付いていない種も多数あるといわれています。また、世界では5,000種以上が生息しているといわれています。

ウシノシタ
イラスト:あかんべーをする牛を見て、やれやれという顔をするウシノシタ。 分類ではカレイ目カレイ亜目のウシノシタ科、ササウシノシタ科、アキルス科の総称になり、形態が牛の舌のように見えることからシタビラメとも呼ばれていますが、分類上はヒラメの仲間ではありません。ゴカイ類や甲殻類を捕食する肉食性で、主に世界の熱帯から温帯の沿岸域の砂泥底に生息していますが、淡水産の種も含まれます。刺し網や底びき網などで漁獲される白身の魚で、味は淡泊とされています。

ウシエビ
 分類では節足動物クルマエビ科ウシエビ属になります。大きいものは30㎝を優に越え、クルマエビ類の中では最大種であり、形態の大きさを牛に見立てた「ウシエビ」が正式和名ですが、生きた状態の外見が黒っぽく縞模様であることから名付けられた英名「ブラックタイガー(黒いトラ)」の方が市場では通っているように見受けられます。浅い海の砂泥底にいる藻類や貝類、ゴカイ類を捕食する雑食性で、汽水域から淡水域でも適応し、房総半島以南の太平洋側から広く東南アジア、アフリカにまで生息しています。市場に流通する大半は海外からの養殖物で、国内の天然物は主に刺し網で漁獲されますが、流通量はごくわずかです。エビ特有の甘みとプリッとした歯応えが楽しめますが、味自体は淡泊なため和洋中どの料理にも合います。また、脂肪分がほとんどないのが特徴で、良質なたんぱく質に富んだ海産物です。

「四季のさかな話題辞典」金田禎之著より一部抜粋

有孔虫② ~気候変動のシグナルを記録

 過去80万年の地球の歴史をみると、氷期と間氷期が約10万年の周期で起こっていたことが分かっています。氷期には地球上の氷床量が増え、軽い酸素同位体16Oは氷床に閉じ込められ、海洋には18Oが濃縮されます(図)。そのため、海洋に生息する有孔虫の殻の酸素同位体比には各時代の氷床量の変動が反映されます。古気候を研究する上で欠かせないこれらの事実を明らかにしたのは、マンハッタン計画(第二次世界大戦中の原爆製造を目的とした一連のプロジェクトのコードネーム)によって発展した同位体の分離・濃縮技術とそれらを海洋地質学に応用した戦後の科学者たちの飽くなき探求心でした。マンハッタン計画でウラン235の分離・濃縮技術の開発を担ったハロルド・ユーリー(重水素発見の功績でノーベル化学賞を受賞)、アルフレッド・ニーア(同位体質量分析計を初めて開発した)、ウィラード・リビー(のちに放射性炭素年代法を確立してノーベル化学賞を受賞)らの技術は、戦後の古海洋学の研究成果の源となりました。戦後、ユーリーは、化石に含まれる元素の同位体比から過去の水温を推定できると考えました。チェザーレ・エミリアーニは、ユーリーのもとで柱状堆積物中の浮遊性有孔虫化石の酸素同位体比を初めて測定し、第四紀に氷期と間氷期が何度も繰り返していたことを1955年の論文で明らかにしました。この成果は古海洋学の始まりとなりました。ニコラス・シャックルトンはさらに質量分析計を改良し、個体数の少ない底生有孔虫化石の酸素同位体比の測定を可能にしました。そして、底生有孔虫の結果とエミリアーニの浮遊性有孔虫の結果を比較することで、酸素同位体比の変動は水温よりも主に氷床量の変動を反映していることを明らかにしました。こうして有孔虫は1970年代以降、古海洋学の花形となったのです。

(中央研究所 海洋環境グループ 池上 隆仁)


氷期の氷床と海と酸素同位体の関係


海の豆知識は、第86号にて休止とします。長らくご愛読いただき、ありがとうございました。

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