タイトル:3.発電所と環境・海生生物(3)

3-3 魚介類の成育への影響

■ 魚介類の致死温度

 海水とともに発電所へ取り込まれる魚介類の卵稚仔・幼生や、温排水を避けることができない稚貝や成貝などに及ぼす温排水影響を把握するため、生活史の各発育段階別に致死温度を明らかにする生物影響試験を行っています。
 マダイやスズキなどの魚類について、受精から稚魚までの間の温度耐性の変化を把握することで、高温に弱い発育段階があることなどがわかってきました。
 また、ハマグリ、アサリ、トリガイ、アコヤガイ、クロアワビなどの貝類について、稚貝、成貝などの死亡が起こり始める温度(致死温度)などもわかってきました。



写真:B細胞期、D型幼生、殻長2.5ミリの稚貝の顕微鏡写真
トリガイの受精卵、幼生、稚貝


■ 温排水と他の要因の複合影響

 沿岸の特に内湾・内海では、発電所温排水の昇温と低塩分、低酸素、濁りなどの条件が海生生物に複合的な影響を及ぼすことが懸念されることから、実験的に検討を行いました。これまでにクロダイ、シロギス、マダイ、アサリ、マガキなどの海産動物や、ワカメ、クロメ、ホンダワラ類などの海藻類等について、影響が現れやすい種類とその発育段階、さらには影響が現れると推定される値がわかってきました。



写真:試験機器がならんでいます
高温度・低酸素濃度接触試験
 さらに、近年、南方系の植食性動物の生息範囲が拡大し、それらによる大型海藻類(褐藻類)の食害拡大や藻場の衰退(磯焼け)が指摘されています。このことと、海水温の上昇の影響を調べるため、現在、植食性魚類の代表種であるアイゴによるアラメやホンダワラ類などの大型褐藻類への昇温の影響を室内実験によって調べています。
こちらをご参照
写真:試験機器がならんでいます
アイゴとアラメの種間関係試験

■ 水温変化と魚介類の成長

 発電所では、電気を多く使う昼間は高い出力で運転し夜間は出力を下げることがあります。これに伴って、温排水の水温も変化します。この水温変化が魚介類の成長に及ぼす影響を明らかにするための試験を行いました。
 イシダイ、マダイ、クロソイ、クロダイ、シロギス、イサキに3~6℃の周期的な水温変化を与え、成長に及ぼす影響を試験した結果によれば、いずれの魚類も成長適水温の範囲内であれば、水温変化は影響しないことがわかりました。



グラフ:縦軸に昇温幅(℃)、横軸に試験開始日から終了日までの6時と18時の温度を示して、試験の状況を表しています
周期的な水温変化を与えた試験

■ 魚介類の成育適水温

 冬季の低水温時には温排水を利用することにより、その魚の成育適水温を維持し、魚の活性を高め、成長を促進させることができます。これまでの水温と生物の成長に関する試験結果から、対象魚の成育適水温と最終選好温度がほぼ一致することがわかりました。さらに、温排水を利用したときの成長促進効果を定量的に予測するため、温度による成長予測モデルを作りました。



写真:自然海水で育った個体よりも温排水飼育による個体の方が大きくなることをマダイの写真で比較して見せています
温排水飼育による成長量の増大(10月~1月)